血液中のタンパク質「AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)」を発見した、東大大学院教授の宮崎徹先生が書かれた本です。
宮崎先生とタンパク質「AIM」のことは、ネットで
「猫の死因に多い腎不全を治療できる「AIM」という物質が発見された。AIMを使った治療薬が実用化されれば猫の寿命が30歳までのびる!」
という記事が話題になって知りました。
猫飼いにとって、腎臓病の治療薬ができるなんて素晴らしく希望にあふれたニュースです。
多くの猫は15歳くらいになると腎不全になってしまい、治療法がなく、命を落とすことがとても多いのです。
AIMのはたらきについて、また、宮崎先生によるAIMの実用化に向けた取り組みについて調べているうちに、書籍『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』が発売されたと聞き、早速読んでみました。
どんな本?
この本は、一言でいうと、
宮崎先生のこれまでの研究者人生とAIMを発見してから現在に至るまでの猫の腎臓病治療薬の実用化に向けた研究の状況について述べた自伝のような本です。
この本には、猫の腎臓病を治すことができるAIMが実用化される具体的なスケジュールなどは記載されていません。
ですが、宮崎先生がどんな研究者でどのような環境で研究してきたか、AIMとの偶然の出会いから、AIM実用化へ向けて奮闘していることが書かれています。
また、腎臓病になってしまう原因やAIMのはたらきについて、一般人でも理解できるようにとてもわかりやすく書いてあります。
AIMの研究に至るまでの宮崎先生の研究者人生でどんなことがあったのか〈研究の背景・経緯〉
なぜ腎臓病の治療にAIMが有効なのか〈腎臓病の原理とAIMのはたらき〉
これらが読みやすく記載されたこの本が出版されることにより、AIMの研究が多くの人に理解され、支持されるような内容になっています。
巻末には、印税の一部が、猫と人の腎臓病研究の費用に充てられることも明記されています。
読んでどう思った?
猫の腎臓病治療薬について書かれている本だと思って読み始めたら、半分ぐらいは宮崎先生のこれまでの研究者人生のお話でした。
AIMの話が本格的に出てくるのは本の中盤の第3章から。
想像していた本の内容とは少し違ったものの、どんどん読み進めてあっという間に読み終わってしまいました。
宮崎先生はもともとは患者さんを診るお医者さんだったけれど、「治せない病気」を治したいと考え、なぜ治せない病気にかかってしまうのか?を研究するために基礎研究者に転身したそうです。
管理人はあまり病院にお世話になったことがなく、「治せない病気」がたくさんあるという事実を恥ずかしながら知りませんでした。
「治せない病気」のひとつ、「腎臓病」は人も猫も苦しむ、ということも詳しくは知りませんでした。
また、「研究者」って具体的に何をしているんだろうということも知りませんでした。
そんな何も知らない読者だったからということもありますが・・・
前半の宮崎先生の研究者になったきっかけや修業時代の話は、このような人生だったからAIMを発見できたんだろうと感心しました。(宮崎先生はAIMを偶然に発見)
研究者としてどのようにステップアップしていくかということも書かれているので、研究者を目指している方にも良さそうですし、一般的に知られることの少ない「研究者」の仕事ぶりについて知ることができて興味深かったです。
後半のAIMのはたらきについては、かわいい図の解説も多くあって専門家でなくてもわかりやすく、ぼんやりとしかわかっていなかった腎臓病について理解を深めることができます。
なんで腎臓病になってしまうのか理解しておくことは、もし愛猫が病気になってしまったときに獣医さんの説明を理解する手助けになりますし、ひいては愛猫のためになると思っています。
猫の腎臓病治療薬が早く開発されて、多くの猫が救われるよう、期待する気持ちが高まる1冊です。